「動画のエンコードとは?」動画制作からDVDプレス用データ作成まで徹底解説

公開日
2025年12月10日
動画のエンコード

 

動画を制作・配信したりスマホで撮影した動画を活用したりする中で、必ずと言っていいほど出てくる言葉、それが 「エンコード」です。

エンコードの意味や仕組み、そしてDVDプレスに入稿する際に求められるデータ形式や注意点を理解することで、トラブルのない高品質な映像作品を作ることができます。

この記事では、動画エンコードの基礎から、DVD用エンコードの具体的な設定・入稿形式まで、初心者でも分かるように網羅的に解説します。

動画エンコードとは?

「エンコード(encoding)」とは、データを一定の規則に従って別の形式に変換することを指します。
特に動画の文脈では、映像・音声データを圧縮・変換して扱いやすい形式にする作業を指します。

つまり、「エンコード作業」とは、動画を以下のようにする作業です。

  • ファイルサイズを軽くして扱いやすくする
  • 再生できる機器や環境に合わせる
  • DVDなどの規格に合わせるための必須プロセスです。

なぜエンコード作業が必要なのか

撮影直後の動画データは高品質ですが、その分ファイルサイズ(容量)が非常に大きく、そのままでは編集や配信、DVD化が困難です。

エンコードを行わないと、以下のような問題が起こります。

  • 再生環境(スマホ・PC・Web)でスムーズに動かない

  • アップロードや配信時に時間・通信量がかかる

  • 他のデバイス・形式で互換性がない

 そのため「できるだけファイルを軽く、かつ再生可能な形式に変換する」作業=エンコードが、動画において非常に重要になります。

エンコード作業の目的とメリット

1. ファイルサイズの削減・転送・保存性の確保

動画ファイルは、解像度・フレームレート・ビットレートなどの要因でデータ量が膨大になります。

 エンコードで適切に圧縮・変換することで、以下のようなメリットがあります。

  • 動画のアップロード・ダウンロードが速くなる

  • ストレージ容量を節約できる

  • ネットワーク負荷・通信量を抑えられる

2. 再生環境・互換性の確保

スマホ・PC・タブレット・テレビ・Webブラウザなど、動画を視聴するデバイスは多様です。形式・コーデックが合わないと再生できなかったり、カクついたりします。
エンコードにより、視聴環境に合った形式・ビットレート・解像度に変換しておくことで、幅広い環境で再生可能になります。

3. 配信・ストリーミングのための準備

Web動画・ライブ配信では「読み込み中の待ち」「再生の中断」「転送の遅延」などが品質を下げる原因になります。
適切なエンコード(ビットレート調整、キーフレーム間隔調整、マルチビットレート出力など)を行うことで、スムーズな再生・快適な視聴体験を提供できます。

4. DVDプレスのための規格準拠

DVDプレスを行う際は「DVD-Video規格」に沿った形式でデータを用意しなければなりません。 ここでのエンコード作業を誤ると、再生できない・納品不可 といったトラブルになります。

 

5. 動画編集・書き出し後の最終化

動画編集ソフトで編集を終えた後、書き出し(エンコード)することで、配信・共有・アーカイブに適した形式・サイズの動画を生成します。
この最後の変換を怠ると、編集時と違う環境で再生できなかったり、ファイルが大きすぎて扱いづらかったりします。

エンコード / デコード / コーデックなどの用語整理

用語

意味

エンコード(Encode)

データを圧縮・変換する作業

デコード(Decode)

圧縮データやエンコードデータを元の形式、または再生可能な形に戻すこと

コーデック(Codec)

圧縮・伸長のアルゴリズムまたはソフトウェア/機構。動画のエンコード・デコードに使用される。
エンコード・デコードを行う仕組み(例:H.264、MPEG-2)

コンテナ形式

映像と音声を格納する形式(例:MP4、AVI、VOB)

これらの用語と関係を理解することで、エンコード作業時に正しい形式を選びやすくなります。

動画エンコードの主要な要素と設定項目

動画エンコードを理解するためには、下記のような設定項目や要素を押さえておくと良いです。
設定を誤ると、DVD再生機器での再生が不安定になるため注意が必要です。

1. 解像度(Resolution)

動画の横×縦のピクセル数を表します。例:SD(720×480)、HD(1280×720)、フルHD(1920×1080)、4K(3840×2160) など。
解像度が高いほど画質は良くなりますが、データ量も増加します。配信用途や再生デバイスに応じて最適な解像度を選びましょう。

2. ビットレート(Bitrate)

1秒あたりに処理するデータ量を示す設定(例:Mbps)。映像ビットレート・音声ビットレートがあります。

ビットレートを高くすれば画質・音質が向上しますが、その分ファイルサイズも大きくなります。用途とトレードオフを考えて設定が必要です。

3. フレームレート(Frame rate/fps)

1秒間に表示する静止画(フレーム)の枚数。たとえば24fps、30fps、60fpsなど。

動きの多い映像ではフレームレートを上げて滑らかさを重視し、動きが少ない映像ではフレームレートを落として画質/容量のバランスを取ることもあります。

4. キーフレーム(Key frame)/間隔

キーフレームとは、「このフレームから差分で次のフレームを作る」という基準となる静止画像のこと。頻繁に動きが変わる映像ではキーフレームを短く入れることで、動きの変化に強くなります。

ただしキーフレームを多く入れすぎると全体の圧縮率・品質バランスに影響が出るため注意が必要です。

5. コーデック・ファイル形式(Codec/Container)

  • コーデック:映像・音声を圧縮・伸長する方式(例:H.264、HEVC/H.265、VP9など)

  • コンテナ/ファイル形式:圧縮された映像・音声を格納する“箱”(例:.mp4, .mkv, .avi)

 適切なコーデック・コンテナを選定することで、再生互換性・配信効率・ファイルサイズなどが改善されます。

6. 可変ビットレート(VBR)/固定ビットレート(CBR)

  • CBR(Constant Bit Rate):常に一定のビットレートでエンコード。安定したストリーミング等に向く。

  • VBR(Variable Bit Rate):シーンごとに必要なデータ量を変えてビットレートを変動させる方式。効率的に高画質を狙える。

7. アスペクト比

アスペクトは、画像や動画、画面の横の長さ(幅)と縦の長さ(高さ)の比率のことです。たとえば「16:9」や「4:3」のように、横:縦の比で表します。

この比率が違うと、同じ内容でも見え方が変わります。たとえば、16:9のワイド画面で4:3の映像を映すと、左右に黒い帯(レターボックス)が出たり、逆に引き伸ばされて不自然に見えたりします。

スマホ、テレビ、PCモニターなど、デバイスごとに標準のアスペクト比が決まっており、コンテンツ制作や表示の際に重要です。最近は16:9が主流ですが、スマホは縦長の9:16もよく使われます。

動画エンコードを行うときのベストプラクティス・注意点

動画を実際にエンコードする際に押さえておきたいチェックポイントと、よくある注意点を紹介します。

1. 目的(配信/保存/共有)を明確にする

  • Web配信・YouTubeアップロード・SNS共有:再生互換性・ファイルサイズ・ネット回線を考慮

  • 社内研修・長時間保存:画質重視・再利用性も視野

  • スマホ撮影→他デバイス共有:互換性重視
    目的を明確にしておけば、解像度・ビットレート・コーデックの設定がブレにくくなります。

2. 元データを保管しておく

エンコードは “一度変換すると元通りの画質には戻せない” 非可逆圧縮であることが多いです。

元の高画質データを残しておけば、後から別設定で再エンコードする余地も残せます。初心者ほどこの運用が安心です。

3. 再生環境・ターゲットデバイスに合わせる

スマホ/PC/タブレット/テレビ/Webブラウザ…。再生環境が多様なため、以下をチェックしましょう:

  • 再生可能なコーデック・形式か?

  • 解像度・フレームレートが再生環境に見合っているか?

  • ネット回線や端末スペックによって再生がスムーズか?
    互換性や快適再生のための「低重・高互換」な形式を選ぶことが重要です。

4. 適切なビットレート・解像度を設定する

高画質にすればするほどファイルサイズ・転送量・処理時間は増加します。逆に軽くしすぎると画質が劣化します。
例えば:

  • 動きの多いスポーツ系動画 → フレームレート&ビットレート高め設定が必要。 
  • セミナー・スライド中心の動画 → 解像度・フレームレートは控えめでも十分なケースあり。

 適切なバランスの設定が「見やすさ」「再生の滑らかさ」「容量の軽さ」を両立させます。

5. キーフレーム間隔・シーク性も考慮

特に動画配信・ストリーミング時には、キーフレーム間隔が長すぎると「シーク(早送り・戻し)」時に時間がかかったり、動きの激しいシーンでモザイク的な崩れが出やすくなります。

そのため、用途に応じてキーフレームの間隔を適切に設定することが重要です。

6. 適切なコーデック・形式を選ぶ

  • 現在主流:映像「H.264 (AVC)」、音声「AAC」など。

  • 新たな高効率コーデック:HEVC (H.265)、VP9、AV1 なども登場していますが、再生互換性や処理負荷を考える必要があります。

  • 配信先のプラットフォーム(YouTube/SNS/自社配信)で推奨設定が提示されていることもあるため、必ず確認しましょう。

7. エンコード時の時間・処理負荷を把握

高解像度・高ビットレート・高フレームレートの動画ほど、エンコードにかかる時間・使用するPC/ソフトの処理能力が増します。

編集後→書き出し(エンコード)までのワークフローを想定しておくと、効率的です。

動画エンコードの具体例・ケース別設定の目安

以下に「よくあるケース」として、目的別の設定目安を整理します。もちろん目的・素材・再生環境によって変動しますので、あくまで参考としてご覧ください。

ケース

解像度・フレームレート

ビットレートの目安*

備考

SNS投稿/スマホ共有用

1280×720(HD)/30fps

映像:5〜8Mbps、音声:128kbps程度

容量を抑え、スマホでの再生重視

YouTube/Web配信用

1920×1080(フルHD)/30〜60fps

映像:8〜12Mbps(30fps)/12〜20Mbps(60fps)

高画質+Webでの視聴快適性を両立

長尺研修動画/企業用途

1920×1080または1280×720/30fps

映像:4〜8Mbps程度

容量・コスト抑えながら視聴可能に

4K/高画質用途(配信・保管)

3840×2160/30〜60fps

映像:20〜50Mbps以上

高性能機・高速回線必要

上記は、あくまで目安です。エンコード設定ソフトや配信プラットフォームにより推奨値は異なります。

エンコード作業の効率化と品質アップのコツ

  • 素材段階から高画質を維持(低圧縮マスターを使用)

  • 目的別プリセットを活用(配信/DVDなど)

  • 複数ビットレートでテスト出力

  • オーサリング前に必ず再生確認

これらを徹底することで、失敗のない高品質なDVDプレスが可能になります。

【重要】DVDプレスに必要なエンコード作業とは

1. DVD用エンコード作業の目的

DVDは「DVD-Video規格」という国際標準に基づいて制作されます。
そのため、動画をこの規格に沿った形式(MPEG-2形式)でエンコードする作業が必要です。

この作業を怠ると、以下の問題が発生します。

  • 映像が再生できない

  • 音ズレ・ブロックノイズが発生

  • プレス工程でエラーが起こる

2. DVDプレス用エンコードの設定例

項目

設定値

映像コーデック

MPEG-2

解像度

720×480(NTSC)

フレームレート

29.97fps

ビットレート

6〜8Mbps

音声形式

AC-3またはLPCM

音声サンプリングレート

48kHz

ファイル形式

VIDEO_TSフォルダまたはISOイメージ

💡注意点
一般的なMP4(H.264)はDVDプレーヤーでは再生できません。
必ず MPEG-2形式 でエンコード作業を行いましょう。

DVDプレス入稿におけるデータ形式とエンコード作業フロー

1. 入稿可能な形式

DVDプレス会社に入稿できる代表的な形式は以下の通りです

データ形式

内容

VIDEO_TSフォルダ

オーサリング済みDVDデータ(VOB/IFO/BUPを含む)

ISOファイル

完成済みDVDイメージ(そのままプレス可能)

MPEG-2ファイル

オーサリング前の素材(映像.m2v+音声.ac3など)

2. エンコード作業の流れ(DVDプレス対応版)

  1. 編集ソフトから高画質マスターを書き出す
     例:H.264形式(高ビットレート)で出力

  2. エンコードソフトでMPEG-2に変換
     例:Adobe Media Encoder/TMPGEncなどを使用

  3. オーサリングソフトでDVD構造を作成
     VIDEO_TSフォルダ生成(チャプター・メニュー設定)

  4. 再生確認・ISO化して入稿
     再生不具合がないか必ずチェック

 

まとめ

  • 「動画 エンコード」とは、動画データを圧縮・変換して、再生/配信/保存に適した形式にする作業です。

  • ファイルサイズ削減・再生互換性・配信効率のために 必須の工程 です。

  • 解像度・ビットレート・フレームレート・コーデック・キーフレームなど、多くのパラメータを理解し、用途に合った設定を選ぶことが重要です。

  • 元データの保管・目的の明確化・適切なソフト選びを行い、何度も再エンコードすることを防ぎます。

  • 初めて動画配信/編集を行う方でも、「H.264 + MP4形式/YouTube推奨設定」などの定番を押さえておけば安心です。

弊社(プラチナディスク)では、DVDプレスのオーサリングサポートも行っています。

動画データをどの形式にすべきか不安な方は、お気軽にご相談ください。