蓮沼ラビィ
家でテレビを観ているよりも
2015年3月4日  ¥926.−(税抜き価格)  RABII-0002
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 力強く優しい歌声は、大地の賜物のごとく心に響く。アフリカ帰りの任侠ブルース、蓮沼ラビィのファースト・フルアルバム。音楽評論家・鳥井賀句氏の推薦。

蓮沼ラビィの歌を初めて聴いたとき、なんて朴訥とした歌い手なんだろうと思った。コード進行やアレンジ等、音楽的な見地から見れば、彼女の曲にはお洒落なコードもポップなアレンジも何もなく、基本的にはいわゆるスリー・コードと呼ばれるシンプルなコード進行の曲ばかりで、ギターの腕前も初心者レベルであり、ヴォーカルは迫力はあるものの、ところどころ不安定な部分もあり、いい意味での素人ぽさが目立っていたからだ。

ところが彼女が歌う歌詞の言葉は、「あんたのお骨は、墓には入れないよ、あたしがベッドで、抱えて眠るから」(「墓には入れないよ」)とか、「天下も国家も関係ねえ、お前と戦場駆けりゃいい」(「俺と赤兎の物語」)等々、まるで任侠映画のワンシーンを見ているような男前でハードボイルドな歌が多く、聴いているうちに、彼女の赤裸々で情念のこもった言葉を歌うには、お洒落なコードやポップなアレンジなど無用のものであると思わされてくるのだ。真実の言葉を歌うには、シンプルな伴奏が一番効果的なのだから。

 アフリカ人と結婚してケニアに暮らし、離婚後は日本へ戻り「アフリカ帰りの任侠ブルース」のキャッチ・コピーで歌っている蓮沼ラビィについて、昔はジャーナリストをやっていて日活ロマンポルノ映画の取材をする中で、その代表的女優であった白川和子の生き方に共感し、「夜の髪」という歌を書いていること、東日本大震災のあと、定期的に被災地の福島県南相馬市の仮設住宅を訪れ、ボランティアで歌っていること・・くらいしか、僕は彼女について知らない。

 だが初めて彼女の歌う歌を聞いて以来、蓮沼ラビィというシンガー&ソングライターほど、心の奥から沸き出る自分の魂の叫び声を、嘘のない真実の言葉で歌いきる歌手は、滅多にいないだろうと確信した。彼女の歌はフォーク・ソングの形態を取っているが、実は本来の意味での演歌であり、むしろ「艶歌」と呼ぶべきものであると思う。

 歌っていないときの彼女はそのくったくのない笑顔が可愛い女性であるのだが、一度ステージの上で歌いだすと、そのドスのきいた声とナイフのように鋭い歌で、「緋牡丹御龍」に様変わりしてしまう。彼女が歌うのを聴きながら、客席の女性が泣いているのを見たことがある。俺も彼女が「家でテレビを観ているよりも」を歌うとき、「貪るよりも分け合おう、命の火で温め合おう」の歌詞のところで、心の中でいつも号泣してしまう。なんて素直にこんな真理を歌えるのだろうと。

 世の中には星の数ほどの音楽や歌が溢れ、そのほとんどが手っ取り早い娯楽商品として消費されていく。その全てが悪いとは思わないが、音楽や歌には、もともと人が他者に自己の想いや祈りやメッセージを伝えるという役割があった。ボブ・ディランの「風に吹かれて」はアメリカ60年代の公民権運動の人々の心のテーマ曲となった。ジョン・レノンの歌った「イマジン」はロック世代の若者たちの平和への願いを代弁した。蓮沼ラビィの歌はまだそれほどのポピュラリティは持ってはいないが、少なくとも彼女の歌を聴いた人たちの心を確実に捉えていっている。

 一切の添加物や調味料も加えない無垢な採れたて野菜のような味の歌をラビィは歌う。そしてその無垢な歌を聴いた人の心は、前よりも少し綺麗になっていく。蓮沼ラビィの歌は、人々の心を元気にし、魂を浄化していく。素晴らしい!

鳥井賀句(音楽評論家/新宿SOUL KITCHEN店主)

 

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