New York Standards Quarte
Live at LIFETIME
2013年1月23日  ¥2.500.−  DMCD-23
 ジャズのCDである。名前はニューヨーク、スタンダード、カルテットである。
つまりニューヨークから遣って来たジャズのバンドである。名前の通りのサウンドである。
実は彼ら(ティム、デビッド、ジーン)3人は、この名前で、世界各国で演奏している。
各国の選りすぐりのベースマンを入れて4人のカルテットを作る。この活動を彼らは何年も前から始めていて、各国で出会いを繰り返しながらジャズを伝えている。
なぜ、伝えているという表現をするかと言うと、一緒に演奏することで体感するということだ。ジャズは世界各国で演奏されている。それぞれの国で捉え方、感じ方の違いが、素晴らしい多様性を生み出している。彼らはその多様性を感じながら、一緒に音楽を紡ぎだしている。それが伝えるということだ。

伝えているのは、ジャズの本質である"自由"である。
各個人に任された自由を持ち寄って一つの音楽にしてゆく。アレンジやアイデアは4人で分担しながら、自然に決めてゆく。4人の音楽経験に基づいた、美しさ、スリル、スピード、重さや軽さ、色彩、悲しさや嬉しさの感情、を互いに楽しみ、尊重しながら、音楽を創ってゆく。

スタンダード曲を素材にしている。この事が我々リスナーにまで、その自由を実感させてくれる。ジャズファン一人一人の心にある音楽の記憶と結びついてくる。伝統的なジャズのあの曲、この曲が流れ始めて「あ、この曲知っている!」と思った瞬間、マジックのように心地よいトリックで新しい音楽の中に放り込まれてゆく。 
これがジャズの本質といってもいい。色々なことが音楽の中で起こり、実人生でも起こっている人間の生き方の美しさ、かっこよさ、凛々しさ、慎ましさ、悲しさの記憶が呼び覚まされる。 なんて素晴らしく、わくわくする自由な音楽なのだろう。
 
彼らに初めて会ったのは、新しいライフタイムをオープンした2008年の5月。日本の暑くなるだろう夏の始まりにホテルの裏からテラスを通って入ってきた彼ら一行を出迎えた。
ティムが「この樹木の匂いが日本の匂いだ」と言ったのが今でも忘れられない。

クラブの箱鳴りを確認するように初めての音を出したかと思うと、すぐにバンドが始動し、音の洪水が始まった。それからずっと、私の頭の中で音楽が鳴り続けている。 

2011年からは安ヵ川さんをベースに迎えた。2011年のリハーサル後に、私が「いつもながら素晴らしい」と伝えると、彼らは一斉に「彼のおかげだ」と安ヵ川さんを指さした。 そこがまた好きだなあ。
5年間で6回のギグを経て、今回のライブ録音となった。
毎年、ギグの最後の曲を聞きながら、「もう終わってしまうのか」と思うほど、私にとっては夢の時間である。

彼らとの出会いをCDにまとめることが出来たのはジャズクラブのオーナー冥利に尽きる。素晴らしい聴衆とスタッフ、録音、編集、全てをまとめてくれたダイキムジカの関係者に感謝。          
 
2012・12・4 ライフタイム 久保田隆(ゆたか)